アストロスケールホールディングスの構造的な強み
アストロスケールホールディングスの構造的な強み
はじめに
中の人はアストロスケールホールディングスの株を500株買っています。
1007円で100株、1111.5円で200株、1250円で100株、1949円で100株です。
少ないと思われた方も多いでしょうが、私は基本的に赤字銘柄には投資しません。
リスク許容度から考えれば例外的な投資額です。
更に言えば、かなり株価が上昇した後の直近の押し目でも購入しています。
宇宙銘柄は他に購入せず、アストロスケール1本です。
個別の金融商品の売買は推奨しませんが、私は自信を持っているということです。
1.宇宙デブリ除去事業の需要
アストロスケールの主力はスペースデブリの除去事業です。
地球の軌道上には機能停止後の人工衛星やロケットの部品などが「宇宙デブリ(宇宙ゴミ)」として大量に浮遊しています。
完全他力本願寺ですがJAXAの解説ページを見るとわかりやすいです。
アストロスケールの名前もしっかり載ってます。
ここからが本題です。
これから宇宙開発が加速していくのは確実でしょう。
宇宙に打ち上げる物体が増えれば宇宙デブリも増えます。
宇宙デブリが増えた所でさらに宇宙に物体を打ち上げれば、当然トラブルを引き起こします。
広大な宇宙空間での衝突リスクは低いですが、人工衛星がデブリと衝突して砕け散り、それが新たなデブリとなり他の衛星に衝突して再びデブリが生まれるというループが発生すれば天文学的な損失が出ます。
宇宙デブリの除去は宇宙開発において避けられないコストになるということです。
アストロスケールは付加価値の高さではなく必要性で勝負できる点で他の宇宙銘柄とは異なるポジションを得られます。
衛星を打ち上げて何かしらのサービスを展開する企業の場合、常に他の手段と競争する必要があります。
例えばQPSホールディングスは小型の衛星を多数打ち上げることで絶え間なく精度の高いデータを提供して収益を得ることを目指しています。
これはこれで期待できる内容ではありますが、結果として得られるものがデータであるという点が問題です。
防災や国防の需要はありますが、衛星でなければ得られないデータの需要がどこまで伸びるのかは未知数です。
各種センサーが日々進化し、センサーを移動させる手段としてドローン等も考えられる中では他に安く済む手段が発見されるリスクもあります。
もちろん良い面もあって、衛星からデータを得られる体制さえ整えてしまえば顧客が数倍に膨れ上がってもコストはそれ程上がらず、高い利益率を出せる可能性はあります。
アストロスケール以外の銘柄が悪いと言いたい訳ではなく、リスクとリターンの期待値をどこまで許容するかの問題です。
2.宇宙デブリ除去の先の展望
宇宙デブリ除去には軌道上を高速で周回している物体に接近する必要があります。
この技術があればデブリ除去だけでなく、稼働中の衛星に対して点検や補給や整備ができる可能性があります。
これまでは宇宙で稼働させる物体は補給も修理もなく使い捨てが常識でした。
ハッブル宇宙望遠鏡は修理を受けましたが、手段は宇宙飛行士を送り込んでの人力修理というパワープレイで予算を考えると再現性が低いです。
実現すればとてつもない利益になりそうですが、まず衛星側が補給や修理を前提とした設計になる必要があるので形になるのはまだまだ先の話です。
特殊な技術によって生まれる超長期成長シナリオを抱えているということは投資する上で良いことだと思います。
現時点での受注としても日米で衛星への燃料補給の実証実験があり、目先の利益にも貢献できています。
3.競合他社が不在
アストロスケールの技術は特殊で、このまま商業的に成功すれば独占状態になると考えられます。
高い信頼性を要求されること、宇宙開発に必要なことから独占禁止法等の法規制も受けにくいのではないでしょうか。
過去に他国や大手企業が行った宇宙空間でのドッキング実験は、事前にドッキング装置や通信機能を備えた互いに協力し合える衛星(協力物体)同士で行われていました。
しかし、アストロスケールが挑んでいるスペースデブリは通信が途絶えて激しく回転しながら高速で飛び交う非協力物体です。
相手の位置情報も状態も不明な状況で、数メートルまで接近して速度をシンクロさせる「RPO(ランデブ・近傍運用)」という技術において実証実験を次々と成功させている企業は世界にほぼ存在しません。
衛星への補給も実証実験の段階に入っています。
同業他社に困難な内容である以上、衛星側の設計段階からアストロスケールの技術に頼る前提でプロジェクトが進行していく可能性が高いです。
衛星の耐用年数が5年でも10年でも打ち上げコストは変わらないため、衛星を長く使用するためなら相当のコスト増が許容されます。
4.日本政府、フランス政府との関係構築
JAXA、防衛省、フランス宇宙省、英国宇宙庁、米国宇宙軍、NASAといった多数の公的機関からの受注実績があります。
直近でも高市首相とマクロン大統領が共同でアストロスケール社を視察していて、フランス事業には何らかの動きが期待できます。
名前的にたぶんフランスの方が常務執行役員に就任していることから、アストロスケール側も力を入れているのではないでしょうか。
5.防衛銘柄としての実力
宇宙空間は人類共通の財産として扱われます。
問題は地上と違い国境がないことです。
複数の国の衛星が同じ宇宙に存在し、それがインフラとして必要不可欠な状況は軍事的にかなり危険です。
今までそれが問題にならなかったのは、そもそも宇宙空間で活動すること自体が困難で他国を攻撃する実力を誰も持っていなかったからです。
非協力物体に一方的に接近して捕らえることができる技術があればどうなるか、容易に想像できますね。
今はまだ宇宙での軍事衝突という概念そのものがまだ発生していません。
しかし宇宙開発が進めばいつか必ず訪れる問題です。
個人的には公的機関からの資金流入は決して止まらないと思います。
防衛銘柄の本命だとさえ考えています。
宇宙デブリを除去して安全に衛星を運用するという大義名分がある以上は、咎められることもありません。
実際、宇宙開発を推し進めるのなら対処が必要な問題なのは事実です。
6.決算
言うまでもなく赤字です。
しかし約411億円という多額の受注残高を抱えています。
複数年の案件もあると思われるのでこれが全て来期の売上にはならないでしょうが、現時点で大きな収入が見えているのは安心材料です。
5月18日には業績予想が修正されました。
次の決算発表までそれ程時間がないので、ほぼ予想通りの業績になるはずです。
これまでレンジ予想でしたが、今回は1点予想になりました。
前期からプロジェクト収益(補助金込みの収益)は85.6%増、売上収益(補助金なしの収益)は132.1%増という大躍進です。
当期利益はかなり上方修正ですが、為替要因が含まれているので実力的にはレンジ予想の上の方に着地できたという印象です。
補助金の支給が遅れているとのことで、これは来期の数字になるでしょう。
高い成長率とそれを維持できると思わせられる受注残高があり、グロース企業としては相当良いと思います。
7.増資
5月19日、総額約306億円の大規模な資金調達が発表されました。
細かいことを解説するとややこしいので割愛します。
大雑把にスカパーJSATとヒューリックに対して新しく株式が発行されるという認識で構わないと思います。
既存の株主にとってのリスクは株が希薄化することです。
企業そのものは変わらず新しい株式が発行されるということは、これまでその企業を5%所有していたはずの投資家が4%の株しか持っていないことになる、という流れです。
しかし個人的にはあまり気にしなくても良いと考えています。
アストロスケールは無配の赤字企業なので配当金が分散することはありません。
例え黒字になっても配当を出す余力ができるのは先の話です。
今回のような第三者割当増資にはロックアップという売却制限がある可能性が非常に高いです。
ロックアップは一般的に短くても半年以上はあるので株価が急騰したからといってすぐに売却されることはまずありません。
資本業務提携である以上、スカパーJSATもヒューリックも長期保有が前提なのは間違いないでしょう。
つまり投資家の間で株式が希薄化したと騒がれていても、現時点で実際に市場で売買される株は全く増加しておらず、需給は変化していません。
実際に株式の希薄化が問題になるまで保有し続ける握力の持ち主でなければ特に関係のない話です。
増資発表の翌日に株価が下落したかと思いきや3日後にはストップ高まで上昇した理由はこのあたりにあると考えられます。
スカパーJSATは将来の顧客候補だしヒューリックも明らかに株価上昇を見越した投資をしているので、ある意味では大手企業からのお墨付き的な側面もあったのかもしません。
受注残高がいくらあってもそれは今投資する資金にはならないのでアストロスケールにとっては金利がない即時の資金調達は確実にプラスです。
株主にとっては長期ではマイナス、短期では無関係です。
8.今買いか
チャートの形状は移動平均線が綺麗に上を向くパーフェクトオーダーであり、文句なしの上昇トレンドです。
ただし、RSIなどの指標はやや買われ過ぎの過熱圏に差し掛かっています。
増資というニュースを見てやって来た空売り勢が捕まっていそうなこと、海外から買いが入ってそうなことから、もう一段は上がると予想しています。
スペースX等の他の宇宙銘柄の期待が高まるほどアストロスケールの需要増にも期待できるという構造であることから、市場の影響を強く受けることになりそうです。
これは株価が下落すれば逆回転する諸刃の剣です。
他のグロース銘柄ではテラドローンが半値まで崩れています。
短期勢は決して逃げ遅れてはいけません。
長期勢はもう株価を見ずに寝ていた方がいいかもしれません。
9.リスク要因
現在考えられる最大のリスク要因は技術的な失敗です。
正直なところ、これは予想しても意味がありません。
明確な根拠を持ってアストロスケールの技術が成功するかどうか判断できる人物がいたら、株より儲かるような高待遇で雇ってもらえることでしょう。
他社の技術力がアストロスケールに追いつくリスクも同様です。
法規制等で締め出されるリスクについては相当低いと見て良いでしょう。
既に日米欧から案件を受注し、関係が構築できています。
グロース企業にありがちな手元資金の枯渇も今回の増資で遠のきました。
最後に
アストロスケールホールディングスは宇宙産業のエヌビディアになれる可能性があると思います。
エヌビディアはITのインフラとしての地位を確立して莫大な利益を得るビッグテック企業たちから資金を吸い上げて時価総額トップに躍り出ました。
アストロスケールも同じようにスペースX等の宇宙開発企業を顧客として、独占的な技術を盾に最大の利益が出せるのではないか、という希望的観測です。
と言っても現状ではバリバリに赤字銘柄なので資金を入れ過ぎないことをめちゃくちゃ強く推奨します。
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